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大工塾ネットワーク協同組合 杢人の会

15:逝きし世の面影
2017.08.31

これは最近私が読んだ本のタイトルで、幕末から明治初期にかけての日本社会を、当時日本を訪れた欧米人の観察記録を通して描いた本です。

幸福そうな笑顔、陽気でよく笑う、礼儀正しく親切、おおらかで、子どもが大切にされている、動物との共生、仕事や生活そのものを楽しむ。こうしたことが、ある一部の地域や階層のみのことではなく、庶民の最下層にまで行き渡っていたそうです。私の思い描いていた幕末の農民や下層階級の人々のイメージが一変する内容でした。

そんななかで、私が一番興味を持った言葉が、「この国においては、ヨーロッパのいかなる国よりも、芸術の享受・趣味が下層階級にまで行きわたっているのだ。(中略)日本では、芸術は万人の所有物なのだ」「なぜ日本ではこのようなことが可能なのだろうか、それは、
日本の職人がたんに年季奉公をつとめあげたのではなく、仕事を覚えたのであって、従って自由な気持ちで働いているからだ。日本人は芸術的意匠とその見事な出来栄えを賞揚することができる人々なので、職人達は何処の地に身を置こうと自分の仕事振りが求められることを知っているのである。日本におけるよき趣味の庶民レベルでの普及こそ、職人が叩き大工ではない一個の芸術的意欲を保持しえている」

理想的な職人の姿が幕末の世にはあったようです。

高度経済成長期から始まった大量生産大量消費から、地産地消へと住宅も徐々に移行しつつあります。私の住む栃木でも大手ハウスメーカーだけではなく、地域密着の中規模工務店に家を頼む人が増えてきました。小さな工務店でも、お客様のニーズをしっかり理解し、真心こめて家造りをすることで仕事を増やしている工務店もあるようです。

職人が芸術的意欲を持ち、住まい手にとって本当に良い家とは何かを考えながら家造りをすることで、日本の住宅文化を職人の手に取り戻せるのではないでしょうか。

「暮らしの器である家は住まう人のライフスタイルを映す鏡である」
家は住まい手の所有物である一方、街の景観の一部でもあります。そして家を建てるということは、社会的責任も同時にあるのではないかと思います。
多くの建て主が「なるべくゴミを出さない」「国産材を使用しているか」などを、建築会社を決める重要な一つになるように、幅広い活動を心がけていきたいと思います。

逝きし世の面影

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