仕事の合間を縫って少しばかりの畑作をしています。
今年の酷暑による不作が各地で伝えられていますが、我が家では里芋がダメージを受けました。しかし例年通りの収穫のものも多くあります。
露地栽培では直に自然環境にさらされるわけですから、暑さ、寒さ、霜、雪、雨、水管理、風水害、虫害、病気など、様々な問題が取り巻いています。不運が重なれば収穫できないこともあります。
不確定要素は多いのですが、季節感にあふれた、瑞々しく、とてもおいしい野菜を頂くことができます。
さて、最近木造住宅において、省エネ化、高気密・高断熱化が進められています。
これらは地球温暖化対策を始め、省エネ法、長期優良住宅法、瑕疵担保法、品確法、エコポイント、フラット35、住宅ローン控除、固定資産税免除など、数多くの施策を受けてのものです。
その理念はともかく、住宅の構法・工法でいえば、私たちが実践しているものとは軸を異にしているのですが、今後この流れはさらに加速するでしょう。
いろいろな立場の人々の、様々な思惑がありますから、以上のことの善悪は私には何とも言えません。しかし、木造住宅の温熱環境という点だけに絞り込んでみれば、日本の住宅は野菜の温室化・ビニールハウス化しているのではないか?と思えてならないのです。
温室・ビニールハウスは外部とは遮断されているので、外部の影響は受けにくく、室内環境は野菜にとって最良の、一定の温度や湿度に保たれています。季節を問わずに高品質(きれいで形が良く、商品価値があるという意味)で、多くの収量が確保できます。何だかいいことづくめのようです。
しかし、ハウス内環境を維持するためのコストは、露地栽培より高くかかるのは自明のことでしょう。
ハウス内では病虫害を防ぐための農薬や化学肥料が多用され、水や温湿度管理なしでは成長できません。全て同じ形をしていますから個性がなく、季節感に欠けています。自然との対話もなく、野菜本来の味わいがありません。
・・・何か現代人の置かれている状況や環境と同じではないか、と思えてくるのです。
日本は明治以後の近代化の流れの中で、経済や産業は飛躍的な発展を遂げました。
資源に乏しい農業国が、戦後は世界的な経済大国にまでなりました。その一方で、日本固有の文化や日本人の感性・品性がかなり失われてしまったことも事実でしょう。
事ここに至って、日本人どころか、人間が本来持つ強さや自然への感性、環境への適応力が失われてしまうのではないかと危惧するのです。
快適・便利・経済という名のもとで、我々は本当に大切なことを見失いつつあるのではないでしょうか。
コメントを書き込む