何年も前から職人不足とは言われ続けていますが、大きなビルの建設現場でも職人が不足しているそうです。「世の中に仕事のない職人がたくさんいるのに?」と思いますが、難しい仕事ができる熟練職人が不足しているようです。
住宅建設の分野においては、一般的な住宅を施工する場合、熟練職人を必要とする部分はほとんどありません。熟練した技術がなくても施工できるように、既成品が研究開発されているからです。アルミサッシや、集成材の柱などがその代表格。
一方設計士が設計する住宅を施工する場合、熟練職人の存在が不可欠であり、その不足は深刻な問題です。
設計士は設計段階で、この建物にどんな職人が施工するのかということを常に気にしながら、作業しています。同じ設計でも、つくる職人によって違ったものになるからです。既成品を寄せ集めて設計すれば、職人のことを考えずに設計できますが、設計士として仕事をしたとはいえず、メーカーの営業マンと同じになってしまいます。設計士は職人との打ち合わせの中で建築をつくっていくのです。
設計士と職人は互いに共働しなければ、良質な建築をつくることができないので、今現在の設計と施工分離の状態は必ずしもいいとは言えません。設計した図面を基に、複数の施工業者に見積もりを取り、一番安い施工業者に仕事を発注するという方法は、設計と施工の図面作成段階での共働を不可能にしているのです。施工業者を早めに決定し、図面完成前から材料や納まりを話し合うことは大切で、建築をよりよくします。
そしてこの共働が、設計士と職人の技術的レベルを上げる役割の一つでもあるのです。
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