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大工塾ネットワーク協同組合 杢人の会

39:協労から学ぶ
2017.09.06

今回は、少々「手前味噌」的なコラムになってしまいましたが、どうぞご勘弁ください。

平成24年1月、多くの杢人の大工が携わった建物が完成しました。

普段から会っているメンバーとはいえ、別々の会社の人間が大工工事を協同で行うという「杢人の会」初のプロジェクト。
(ちなみに、私の役割は工事監督。)
複数の親方のもとで仕事をするということは、うまくいかないことが多々あったと思います。余計な手間がかかったりして、普段よりも仕事がし辛かったと思うのですが、そんな事は誰もひと言も漏らさず、やり抜いてくれました。お互いが気を遣ってくれたのでしょうが、本当に頭が下がります。
複数の親方・大工を一つにまとめるということは、想像以上に大変な事だと思いますが、棟梁の鴫原孝さんがやりとげてくれました。
また、若い大工たちは、休憩のたびに先輩に質問をしていました。他人の質問であっても一心にメモをとる姿を見れば、自分の親方以外の多くの先輩に囲まれ、いろいろな事を学んだに違いありません。遊びたいだろうし、彼女も欲しいだろうに、大工仕事以外には脇目もふらずに、一心に打ち込む姿には、心底心を打たれました。

施工段階での変更は施工者にとっても必ずしも望ましい事ではありませんが、「良い建物を造りたい」「自分自身が納得いく仕事をしたい」との想いで集まっている集団だからこそ、細部にわたり、設計者を交えて、何度も何度も打ち合わせが行われました。
姉歯事件の後、建築基準法、建設業法など私たちを取り巻く法律が厳しくなり、「設計士が描いた図面が絶対で、現場では一切変更をしてはいけない。」ということになりました。
家をつくる人にリスクが及ぶような事態を避けるための法律改正で、一見正しい措置の様な気もします。 私は、「してはいけない変更」の方が多いとは思うのですが、より良く住むために多少の変更は必要な気がしています。
毎回同じ物を造る工業製品のような家ならば、一旦完成型を決めてしまえば、それ以降は、「変更はなし」となっても良いだろうけれども、一品生産の注文住宅を造る私たちの場合には、この部分をなくしてしまうことの方が弊害が多いような気がしています。
確かに理想ではあるでしょうが‥、どんな優れた設計者でも、すべてを理解し図面に反映することは、実際には不可能だと思われるからです。
現場で、あるいは下小屋※で設計者と施工者・職人がそれぞれの立場で、最高の仕上がりのために、真剣に話し合う。
建築とは本来そうゆうものではないでしょうか。

平成23年3月11日、最も地震に弱い軸組段階で東日本大震災に遭遇しました。幸いけが人もでず、大きな被害はなかったものの、いつ余震が来るかわからない中、私は屋根に瓦を載せることなど、前に進ませる指示を怖くて出せなくなってしまいました。
そんな時も多くの「杢人」仲間に支えられ、励まされながら、試練を乗り越え、完成の日を迎えることができたたわけです。
すばらしい仲間とともに仕事が出来る自分の幸せを改めてかみしめています。
仕事をさせていただいたお施主様、設計者、多くの職人・関係者の皆様に心より感謝いたします。

※下小屋(したごや):大工の作業場のこと

協労から学ぶ

投稿者:稲垣強

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