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大工塾ネットワーク協同組合 杢人の会

31:新しい地図をつくる
2017.09.05

3月11日に東北地方で大きな地震が起こりました。住宅をつくる人間として倒壊したり津波に流されたりした家を見るのはつらい思いです。被災されて命を落とされた方のご冥福をお祈りすると同時に、多くの人の日常の生活が早く戻ってくることを願うばかりです。

1995年の1月に発生した阪神の地震から16年、そのときの衝撃から16年目にまた大きな衝撃を受けたことになります。16年前、大地震と木造住宅の安全性という厳しい現実を突きつけられて、自分たちのつくる木造住宅の性能を知り、地震に対する明快な構法と技術を確立したいと思ったのが、大工塾の始まりでした。それが、杢人の会の始まりでもあったわけです。大工塾では、木構造の基本的な考え方を学び、地震に対して木構造が持つべき必要な性能を解析し、一方で実大の壁や仕口の加力実験で実際の技術の性能を明らかにしてきました。そのような一歩ずつ地図をつくるような過程の中で、木造住宅の構法を探してきました。そのたどり着いた結果を「渡り腮構法」としてまとめて、木造住宅の一つの構法モデルとして提案すると同時に、実際の仕事の中で実行してきました。
16年前の衝撃は何がなんだか分からない呆然とするものでした。それに比べると、今回は地震そのものについてはある程度の予測が付くレベルまでになっていましたが、津波に対しては、全く新しい問題が突きつけられたことになりました。

私は、住宅=日常の時間と考えています。そのために、住宅をつくる技術の体系は、ひたすらベーシックな確実な技術の積み重ねで可能になると考えています。個々の好みや美意識、歴史的であること、伝統的であることといった事象は、ベーシックな技術の上に成立する日常の時間を前提に語られることによってのみ、初めて住宅の問題となりうると考えてきました。新たな衝撃は、住宅をつくる人間にとっては新たな課題の出現です。その課題に答える技術の開発を強いられることになります。この16年間と同じ積み重ねの延長で、新たな地図作りに取り掛かかろうと考えています。

大工塾の実大試験体の実験(柱脚の込み栓・耐力壁)

大工塾の実大試験体の実験(柱脚の込み栓・耐力壁)

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